蟹のつぶやき kanikani

道具を使うサル2008年07月29日 13:13

サルが道具を使う、という発見の話は聞いていたが、それを実際に映像で見ると、これは新たな興奮だった。どのようにして道具の石を見つけたのか、使う技術は、どのように伝えられるのか……。疑問と観察、それを追うだけでも楽しいが、それ以上にビックリは、重い石という道具を使うことによって、サルがそのために新たな筋力を鍛え、そこから2足歩行が始まっているらしい、という事実だ。非常に多くの示唆に富んだ映像だった。28日午後10時00分~10時49分の総合テレビ「NHKスペシャル――南米の驚異 道具を使うサル 」

番組のHPによると「主人公は、頭が良いことで知られているフサオマキザル。南米で最も広い範囲に分布する体重3キロほどの小さなサルで多くはアマゾンなどの熱帯雨林で暮らし、果物を主食にしている。道具を使う行動が発見された乾燥した森は、木がまばらで熱帯雨林ほど果物が実らない。そこでサル達が目をつけたのが地面に生えるヤシの実だ。しかし、このヤシの実は、堅い殻に覆われていて、そのままでは食べることが出来ない。」

「フサオマキザルは持ち前の知恵を働かせ、石を道具として使いヤシの実を割る行動を進化させたのだ。石の重さは1キロ程。2本足で立ち上がり、自分の体重の3分の1もある石を使って実を割る姿は、まるで私たち人間の祖先が行っていた活動を、現代に再現させている様にも見える。」

難しいのは、石をどんな加減でヤシの殻にぶち当てるか。そのとき、殻を置く台の位置関係も、どうやら肝心なポイントのようだ。親ザルは決して、自分の子どもといえど、その要領を教えようとはしない。子どもにとっては、その技術・ノウハウは盗むしか方法がない。

と、ここまで見てきて、先日(7月22日)見た「プロフェッショナル 仕事の流儀」で「ハンマー 一筋、新幹線を作る」<http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/080722/index.html>で紹介されていた板金職人の国村次郎さんの映像を思い出した。金属の板から曲面を作る「打ち出し板金」だ。一見単純に見える作業だが、そこには並外れた職人技が隠されている。国村が放つハンマーは、常に板に垂直、しかも狙った場所を正確に打つ。そのために、左手と足で、金属の板を微妙に動かす。職人として、いかに無駄なく、早く品物を作り上げるかに徹底してこだわる。ハンマーは必要最小限のみしか打たない。金属の特性を知り尽くした国村は、どこをどの程度の力で打てばよいか読み切っている。作業にかかる時間は、他の職人の半分。驚くべきスピードで、美しく正確な曲面を生み出していく。――という。

この技術も、スタジオで茂木キャスターも実際にハンマーを揮ってみて、その難しさを語っていたが、やはりハンマー(石)、金属(ヤシ)、台の3点を、どのような位置関係で捉えていくかが、「ミソ」のようなのだ。国村さんは「自然に頭の中で設計図が浮かんで、間違いなく次のハンマーを的確に打っていけるか」が問題だといっていた。そして、こちらは後継者を育てることに、いま挑戦している。