蟹のつぶやき kanikani

花見とネグリ2008年03月30日 12:00

花は満開。ネグリとデングリ
上野を通ったので、ひとつ花見がてら、美術館でもひやかそうか、と下車した。
ところが公園口でビックリ。改札を出るのに長蛇の列。それも何重にもなって。
長い列は、駅構内のどの女性用のトイレにも、延びていた。花見の前かな?後かな?

そんなことで、公園口は断念して、不忍口に回る。駅の誘導は「入谷口」からの迂回だが、それは余りにも遠回りだもの。こちらも公園口ほどではないものの、すごい人の波だ。西郷さんの銅像の下辺りまで行くのにも、ラッシュアワー状態だ。階段には似顔絵書きが各段毎に客に対している、と言う感じ。

公園の桜は、ほぼ満開。広小路側から動物園方向へ進む。大阪・造幣局ではないが、「通り抜け」状態。立ち止まれない。たまに家族や花にカメラを構える人がいると、たちどころに渋滞の輪が広がる。それでも、いちおう「流れ」が確保されている。よく見ると、路面のあちこちに「道路につき宴席禁止」の貼紙が連なっている。「宴席」は、道路が広くなる辺りから展開されていた。朝早くから、あるいは何日か前から、場所取りをしたのであろう「大手会社の御席」と思われるスペースでは、数人の若者が、若者頭の指示を受け、宴会開始の段取りをはじめており、片方では、すでにコンロの肉を囲んで、メーターをあげているグループがあり……。

不思議に思ったのは、かなりの外国人グループが、シートは敷いているものの、地面に座って輪を描いていることだ。大勢の人の群れの中だから、外国人の姿があってもおかしくはないのだが、なにか不思議な感じを受けるのは、見ているこちらの側に、アル何か、なのだろうか。

都立美術館で6日までやっている「ルーブル展」を覗くべく、地下の入り口へと入ってみる。オカリナの演奏をしている女性がひとり。懐かしい「ネバー・オン・サンデー」を演奏していた。そこから見ると、何とナント、ここも長蛇の列。あっさりと「ルーブル」に見切りをつけた。

都立美術館を回り込むと旧音楽学校の奏楽堂。この周辺は整備をしたらしい。一時のブルーテント群も見当たらず、木立も刈り込まれたのか、不思議な明るさに変わっていた。芸大へ向かう。何かの展覧会を開いていたかな、と。行きがけの塀に「ネグリさんとデングリ対話」というヘンチキリンなチラシが貼ってある。29日、30日芸大美術学部構内、とある。もう一方のチラシに「アントニオ・ネグリ氏講演会――新たなるコモンウェルスを求めて」という東大安田講堂での講演とシンポジウムの案内。ネグリ・ふー?

チラシなどによると、イタリアのマルクス論を中心とした政治哲学の研究者。また、イタリア全土を揺り動かした女性・学生・貧民・失業者等、社会的に弱い立場に置かれた人びとによる新しい社会運動「アウトノミア(自立)」を理論的に統括した社会派知識人。「赤い旅団」によるイタリア元首相アルド・モロ誘拐暗殺の嫌疑をかけられ逮捕・起訴される。その後、事件への直接的な関与はなかったことが判明するが、一方で、その体制批判的な言論活動による政治活動への影響力の責任を問われ有罪に……。獄中の立候補、当選、議員特権の剥奪、フランス亡命……。ドラマの主人公に相応しい、ちょっと怪しげな人物。国際、文化会館が今回招待して、イベントを企画した。芸大のそれも、この企画の一つ。ところが、ネグリは来なかった。21日の各新聞に、ネグリ氏が来日を断念、との記事が載っていた。実際とは、彼が断念したのではなく、日本政府がこの「危険人物」の入国を拒否したに違いない。

ということで、ネグリ氏については分かったが、芸大の構内に入ってみても、何の企画は一向に理解はできなかった。中庭では、即興のペインティング。奥のステージではドラム、エレキ、ベースの3人が演奏を始めた。ボリューム最大、どこか中東風のフレーズが入ったり……。さらに校舎を進むと、「身体と衣料のポイエーシム」とかいうシンポジウムの案内があるが、主催者と訪問者が少し短めの飛び縄を跳んでいる。映像プログラムというのは、ネグリ氏関連から、三里塚あり、「山谷(やま)――やられたらやりかえせ」といった題目もある。入ってみて暗い闇に目が慣れると、2人ほどが見つめていたスクリーンでは沖縄の「やんばるの森にヘリパッドはいらない」という米軍のヘリパッド建設中止を求める運動を撮った映像を流していた。スクリーンでは叫んでいた。「沖縄は1879年に日本政府の植民地にさせられ、以来、植民地として扱われてきた……。われわれはこれに反抗するのだ」、と。

久しぶりに70年代の残滓、香りをかいで中庭に戻ると、庭には古びた、しかしドッシリと根を張った木が聳えていた。何という木だろう。上野の花見とは、遠いところまで来た、という感じだった。

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